Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
「ダグラスに勝つためです」

 ベアトリクスの暴言の合間を縫って、ケインが言葉を発した。ジョーンはケインに近づくと、抱きついた。

「わかっているわ。ベアトリクスは、私が落ち着かせるから。ケインは先に部屋に戻っていて」

 ケインがジョーンの背中に手を回した。ジョーンの背中を触るケインの手は、冷たくなっていた。

 ケインも苦しんでいる。ベアトリクスのように感情を表に出さないけれど、心の内では酷く苦しんでいる。

 ジョーンはケインから離れると、応接間に戻った。

 ベアトリクスとマーガレットの二人が、ソファに座っていた。マーガレットがベアトリクスの身体を抱いて、優しく腕を擦っていた。

「ゼクス、下がっていいわ」

 ゼクスの前に立ったジョーンは、口を開いた。ゼクスが短い返事をすると、ドアに向かって歩き出した。

 ドアの入口に立っていたケインも姿を見せると、ジョーンに微笑んだ。
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