Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
―ケインside―

 午後九時。ケインはゼクスと執務室にいた。

 夕食を食べ終わるなり、二人で執務室に籠った。ウイリアムとの交渉が成立した今、次の対策を練りたい。

 ケインは机の椅子に座っていた。ソファにはゼクスが腰を下ろした。互いの手にはエールの入ったグラスを持っていた。

 ケインは椅子の背もたれに背中を預けて、天井を見上げた。

 戦を長引かせるつもりはない。ウイリアムが使えるなら、ダグラス城の城門を開けさせて一気に終焉にさせたい。

 スコットランドにはお金がないのだ。度重なる人質で、他国に借金している。

 だから戦に金をかけている場合ではない。できるだけ簡素な方法で、反乱軍を押さえ込んで終戦させる方法を考えなくてはいけない。

 金がないからと、和解という妥協は許されない。不穏分子を完全に鎮圧して、国王軍が勝利しなくてはいけない。

「ウイリアム、随分と落ち着いていたのが気にならないか?」

 エールを口に含んでから、ゼクスが言葉にした。静かな部屋に聞こえるのは、エールを飲み込む音と、暖炉で燃えている木の音だけだった。

 ケインは視線をあげて、ゼクスの顔を見た。
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