Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
 実際に楽しいから、否定はしない。ブラック家のジェームズ・ダグラスが悔しがる顔を見たいと思っている。頭の中で想像するだけで、顔が勝手に弛み、にやけてしまう。

 ジョーンを裏切り、己の欲望ばかりを優先した結果が死を招いた。絶望に歪む顔を見たい。苦痛で暴れる身体で、ケインに縋りつき、懺悔する姿を見たい。

「どんな情報を流すのですか?」

 静かに聞いていたエドマンドが、口を開いた。

 ケイン以外の五人の顔が一気に、緊張する。チャールズは椅子に座り直すと、テーブルに肘をついて、前に乗り出した。

「バハン伯が国王軍の内応者になり、情報を横流ししている。ウイリアムが牢獄から逃走したという理由から、ダグラス城に攻め込み、バハン伯に午前六時の鐘の音で城門を開けさせる」

 ケインの言葉に、やはりゼクスとチャールズが納得の色を見せる。

 エドマンドは、どっちつかずの顔をした。レッド家のジェームズ・ダグラスとジョージ・ダグラスの二人は、上手くいくのだろうか、と不安そうな面持ちをしていた。

「兄上がハイランド貴族にアクションを懸けているのは、ブラック家のジェームズ・ダグラスだって知っているから、良い提案だと思う。たとえウイリアムが父親に話しても、バハン伯との繋がりを否定されるわけじゃない。むしろウイリアムがダグラス城に姿を見せることで、真実味が増すだろうね」

 チャールズの発言に、ケインは深く頷いた。全く、その通りだ。
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