Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
「アルバニ公マードックと話す機会がなかっただけですわ」

(話すのが嫌で逃げていた、なんて言えるわけないじゃない)

 ジョーンは足を止めた。暗すぎるのが嫌だった。

 ジェイムズが近くにいるかも一切わからない場所で、マードックと一緒に過ごすと考えると、少しでも明るさがあって欲しいと願った。

 マードックと二人きりになっておいて、明るいだの暗いだのと気にする自体、おかしいのかもしれない。

「できれば、二人きりが良かったのですがね」

 隣にいるマードックが後ろにいるケインを見やった。

「ケインは騎士ですから。任務を遂行しているだけ。アルバニ公マードックが気にする必要はないわ」

 ジョーンは感情のない口調となった。

(ケインがいなければ、もしものときに逃げられないでしょ)

「ところで、私にお話とは何でしょうか?」

 鼻息が急に荒くなったマードックの顔が、ジョーンの顔に近づいてきた。鼻息がジョーンの頬にかかり、ジョーンは両手で唇を覆って思わず後ずさった。





        
「アルバニ公マードックは余の妃と、何をしているのだ?」

 ジェイムズが、ジョーンの視界に突然ぬっと現れた。真っ暗闇から、黒い物体が近づいてきたと思ったら、マードックの後ろで動きを止めた。

 声が少し高いのは、興奮しているのだろうか。
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