Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
 門を潜ると、大勢の騎士が整列して出迎えてくれた。指揮官の号令で、大きな声を出していた。ジョーンはスコットランド王妃として、スコットランドの門を通り抜けた。

 ジェイムズⅠ世にはロンドン条約の他に、ジョーンを妻に迎える約束があった。

 一四二四年二月二日にロンドンのサウスワーク大聖堂で挙式を行った。ジョーンは、メイドと護衛の騎士数人を引き連れて、スコットランド王国に嫁いできたのである。

 エディンバラ城の門を潜った馬車はしばらく進むと、止まった。前にいるジェイムズが城の前に到着したのだ。

 いよいよジョーンも馬車から下りる時がやってきた。長時間ずっと座っていたお尻が痛くて、何度となく座りなおしていた。

 ジョーンは背筋を伸ばすと、緩んでいた筋肉を引き締めた。

(まず、第一印象が大切だわ。イングランドの女だからといって馬鹿にされたくない)

 スコットランド王妃として、しっかりした言動をしなくてはならない。イングランドから嫁いできて良かったと、スコットランド人に思われるように努力しよう。隣国同士で、情勢によって敵になったり、味方になったりしてきた。せめてジョーンが王妃でいる間は、両国間での揉め事は起こしたくなかった。

 馬から下りたイングランドの騎士が、馬車のドアをゆっくりと開けた。甲冑に身を包んでいる騎士が手を差し出すのを見てから、ジョーンは立ち上がった。


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