Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
 ジョーンはジェイムズに促されるがまま、森を歩き始めた。

(人の性格を外見だけで判断しちゃ、駄目ね)

 鍛えてある身体や、賢く見える顔から、ジェイムズが誠実で真面目な男だと勘違いしていた。

 全ては見た目から、勝手にジョーンが作り上げていたジェイムズ像であって、真実ではなかった。

「スコットランドにはイングランド人はいらん。従れてきたメイドや騎士は即刻、国へ帰せ」

 ジョーンは隣を歩くジェイムズの顔を見上げた。真っ暗やみでジェイムズの顔が見えるわけじゃないが、つい視線をジェイムズに向けていた。

(イングランド人だけで、固まるのが怖いの?)

 ジョーンは反感を覚えた。異国から嫁いできた王妃は、言葉もわからず、親しい者もおらず孤独であると記憶の片隅にあった。

 幸いジョーンはイングランドから隣国であるスコットランドに来た。ジェイムズもイングランドで人生の大半を過ごしているから、会話はできる。イングランド人の話す内容は、ジェイムズにも理解できるはずだ。

 ジョーンが祖国の言葉を使っていても、ジェイムズが理解できずに不安に思うなんてありえない。
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