Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
「世の中は不平等だわ。男は自由に生きられるのに、女は男の道具でしかないのよ」

 ジョーンが振り返って、ケインの様子を眺めてくる。

 ケインはコルセットの背中部分にある紐を手に取り、紐がねじれないように整えていた。手が震えた。ジョーンの素肌を見て、身体が異常に緊張にしていた。

 言葉を返すべきなのだろうが、今のジョーンにとってどんな返事が良いのか。うまく考えが纏まらない。

 ケインが考えているうちに、時間だけが刻々と過ぎていった。

「ねえ、ケインはもうわかっているんでしょ?」

「だいたいの察しは、ついております」

 ケインは紐を引っ張り始めた。どれくらい力を入れて引っ張ればいいのかわからない。力を入れすぎて、ジョーンを苦しめたくない。

「王妃陛下、大丈夫ですか? 苦しくありませんか?」

 ケインは恐る恐る聞いた。

「ケイン、もっと力いっぱい紐を引っ張っていいのよ」

 ケインは力を強めたが、遠慮はしていた。ジョーンが首だけ動かして、ケインの顔を見てきた。

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