Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
「私、ケインが好きよ。ずっと好きだった。ジェイムズより、ケインが好き。ジェイムズにマードックを外に誘えと言われて、ケインに嫌われないかって、そればかり考えていたわ。どんな風に思われるか、気になって」

(嫌うはずないでしょう。僕は陛下をお慕い申し上げているのですよ)

 コルセットの紐を持っていたケインの手は、ジョーンの体の前に行き、抱きしめた。

 ジョーンの冷たくなっている身体が、火照ったケインの皮膚を癒してくれるようだ。

「国王陛下とお話してから、ずっと心配しておりました。マードック様を探していると聞いたとき、王妃陛下がなさろうとしている意味を理解し、とても辛かった。僕は王妃陛下を利用した国王陛下に、怒りを覚えました」

 ケインは前に立っているジョーンを強く抱きしめた。

 ジョーンの細い身体が折れてしまうのではないかと、ふと冷静になり、とケインは腕の力を緩めた。

 ジョーンの両脇から手を出して、ジョーンの腹の上で手を組んだ。そのケインの手をジョーンが、優しく握ってくれた。
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