Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
「夫婦になるのも、夢なのです。今は無理ですが、いつか必ず」

(私が邪魔だと言いたいのね)

 ジェイムズが欲しいのか。王妃という立場が魅力的なのか。我が子が王となる夢でも見ているのか。いずれにしても、ジョーンを王妃から失脚させたいのだ。ジョーンにとっても、レティアは邪魔な存在だ。

 ジェイムズの愛人でいるなら、なんの障害もない。むしろ愛人でいてほしいと願うが、王妃の座が狙いならジョーンはレティアの存在が邪魔になる。

 レティアが宣戦布告するなら、ジョーンは受けて立つ。そして必ず勝利してみせる。

 ジョーンは一歩前に出て、レティアと肩を並べた。肩に手を置いて、レティアの耳に口を近づけた。

「私、物事をはっきりと口にする方は好きよ。もっと沢山、お話をしたいものだわ」

 ジョーンはレティアの耳から口を離すと、さらに一歩前に足を出した。レティアの背中がジョーンの目の端に移動する。首を横に動かして、レティアの色っぽい首筋を見つめた。

「私は王妃よ。次にお会いするときは、言葉の遣い方に注意しなさい」

 低い声でレティアに忠告すると、ジョーンは大広間のドアに向かって歩き出した。ケインも後ろから従いてきた。

 ジェイムズに対して愛情があるわけじゃない。ジェイムズとレティアが、愛を育もうが子を成そうが、勝手にすればいい。

 ジェイムズの愛人にとやかく文句を言うつもりはない。

 でも宣戦布告されて、暢気に笑っていられるほど大きい人間ではない。
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