Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
「二人とも、レティア・クルーズって知っている?」

 ジョーンはローラとエレノアの顔を交互に見つめた。ローラとエレノアが同時に顔を上げた。

 ジョーンの後ろにいるエレノアと、ベッドの脇を歩いているローラが目を合わせていた。

(ローラもエレノアも、レティアについて何か知っていそうね)

 二人で目を合わせている姿を見て、ジョーンに言い難い情報を持っているのだろうと推測した。

 ジョーンは両手を広げた。エレノアが背中についているボタンを外していった。

「今日ね、ジェイムズの子を身篭りたいって言われたわ。王妃にもなりたいそうよ」

 エレノアが目を見開いたあと、眉間に皺を寄せた。ローラも同じような顔をしていたが、すぐに下を向くと、ジョーンの真後ろに立った。

「陛下に対して、随分と無礼な方ですのね」

 エレノアが口を開くと、ジョーンの右側に立って袖を抜いた。ローラも左側の袖を脱がした。

「どんな女性か。噂くらい耳にしているんじゃないの? 友人に王付きのメイドがいたわよね。話を聞いているんでしょ、ローラ?」

 左を向いて、ローラの顔を見つめた。数秒間、ローラの目が宙を彷徨ってから、ジョーンと目を合わせた。
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