Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
(犯人が見つかりそうにないのね)

 ジョーンは、肩を抱くケインの腕に触れた。

(私も怖がるのは、もうおしまいよ。王妃らしい態度をとらなくちゃ)

 ジョーンは恐怖が残る心に、強く言い聞かせた。瞼を下ろして、目を閉じた。深呼吸を三回繰り返すと、目に力を入れて開けた。

「陛下の警備を増やしましょう。矢も調べさせます」

「そうね。私はレティアの手先のような気がするわ」

 ジョーンは胸の内を小声で呟いた。

 滅多な発言は控えたほうがいいのはわかっている。今は、ケインしか聞いていない。

 ケインが、馬を蹴った。再び馬は走り出すと、今度は川の下流に向かって走り出した。

 ジョーンの馬を拾ってから城に戻るつもりなのだろう。

(きっとレティアに命じられて、誰かが矢を放ったのよ)

 ジョーンの心では、決定されていた。
< 93 / 266 >

この作品をシェア

pagetop