アシタのナミダ
スローモーションに落ちてゆく
季節の移り変わりを知らせる雨が降り続く中で、





大きな翼を広げた鋼鉄の怪鳥は、澱んだ海に浮かぶ孤島を目指し、




灯された暖かな光の回廊へと舞い降りた。





私は浅い微睡みから、耳元に低く響く優しい声で眼醒める。





無数の言葉に溢れる雑音の中で、ただ私を見つめる潤んだ二つの瞳。





整った中性的な顔立ちと清らかな安らぎを与えてくれる唇。





視界の全てを覆う彼の表情が、空っぽで乾からびていた私の泉を暖かな気持ちで満たしてくれた。





この無限に広がる大きな世界と、私に見えているとても小さな世界の中で、ただ一人。





かけがえのない存在。





「トキオ、もう着いた？」





微笑みを浮かべて頷く。





その表情に私は、何度救われただろう。





そしてこれから、何度救われるのだろう。





見つめると自然に溢れる笑顔で、私は彼に口付ける。





「さあ、もう行かないと」




そう言って彼は、私を眠りの海から連れ出した。






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表紙・目次

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