空色の瞳にキスを。
屋敷の廊下が薄暗くて良かった、と黒猫は心底思う。

腕の中に、銀髪の彼女。

誰も来ない廊下。


ルグィンは廊下に座り込みナナセを膝の上に抱き締める。

ナナセを抱き締めて、頭を撫でる。

二人は乱れた息を整える。


赤い絨毯に、4つの足が投げ出される。


彼女は俯き、顔をあげない。


彼の細い指が、くしゃっと優しく銀髪を乱す。

「…泣けよ。
辛いだろ?」

そのルグィン台詞に、ナナセが弾けるように顔を上げる。


彼女の揺れた瞳が、引き結んだ唇が、悲しみを物語っている。

ナナセを片手で抱き締めたまま、もう片方が白銀の髪に少し隠された涙が揺れる瞳をふさぐ。


小さな嗚咽と共に、彼女の瞳をふさいだ左手がじわりと湿る。


「っ…。」

ぽたり、とナナセの頬からルグィンの腕を伝って、涙が絨毯に染みを作る。



―もとはといえば自分が不注意に姿を晒したのが引き金で。


ユリナと偽って、得られない絆を求めたあたしが悪いだけ。


最初から彼らが賞金首の『ナナセ』を狙っていると知っていたのに。

正体を明かさないにしても、心を開いてしまったあたしのせい。

あたしが賞金首で、あの人たちは首狩りだと知っていたのに。

分かり合えないことくらい、昔から知っていたのに。


勝手にふたりを信じて。


自分が獲物だと気づかされただけなのに、こんなに辛い。



こんな失敗は何度もあったのに、いつになく胸が痛くて。

堪らなくて涙を落とした。

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