空色の瞳にキスを。
硬い靴の音を響かせて、廊下を駆ける。

4つの足音が広い廊下に響く。


目の前には、紺のスカートと白いリボンがなびく。

白銀が、黒猫の視界で揺れて、揺れて。



何事かと廊下へと出てきた見知らぬ首狩りたちには目もくれずに、二人で、神速。


ただの人間ではあり得ない、そんな速度、神速。

無意識下で魔術を使い逃げるナナセと、それを追うルグィン。


足の速いルグィンでさえまだ追い付けない。



目の前の白に懸命に手を伸ばしても、空を掴む。


「―…ッ、ハッ…!」

ルグィンが歯を食い縛って、声にならない叫びを噛み殺す。

少し近づいた彼女にもう一度、手を伸ばす。

もう少しで、服の裾を掴めるのに。


あともう少し―…。


突然、手を伸ばした視界の彼女崩れ落ちる。

段差に躓いたようだった。

ぐらりと崩れ落ちたナナセを見て、黒猫はありったけの力で床を蹴り出す。


この手で、受け止めようと。



崩れ落ちるまでに彼の手が届く。

腕を引いて、後ろへと倒す。

わざとナナセの下敷きになり、衝撃を緩和させる。


幸い人がいない、静かな廊下。

息を乱しながらもう一度逃げ出そうとしたナナセを、ルグィンがガッチリと抱き締めて。

一言、溢した。

「…ナナセ、どこへ行く?」

耳元で、低い優しい声が聞こえて、ゆっくりと落ち着いてくる。

荒れたナナセの心が鎮まる。

「…人、のっ…いない…ところっ。」


ひゅ、と息をついて澄んだ空の瞳から雫を落とした。

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