空色の瞳にキスを。
スズランの屋敷の大きな玄関へと二人が持ち込んだ荷物を一つ一つ確認しながら、スズランがにっ、と笑う。

「確かに受け取ったわ。
ごめんね、わざわざありがとう。

助かったわ。」

「スズラン様!」

「はーい!」

屋敷の使用人に呼ばれて、スズランは慌ただしく二人のもとを去っていく。

スズランは彼女がよく好んで着る丈の長いドレスやスカートではなくて、今日は動きやすそうなズボンで駆けずり回っている。

─主人があんなに走ってもいいのかな。

少しだけ、ファイは彼女の役割を気にするが、またなにか浮かんだようで淡く微笑んだ。
まだフードを被ったままの隣のルグィンはそれを不思議そうに見る。

─ああやって身分差を感じさせないように動くから、スズランなりに屋敷を上手く回しているのね。
いつも隣を歩いてくれるあの人の身分を忘れそうになるほどの動きは、ファイにはとても素敵に思えた。
黒髪の少女は獅子の少女が去った後も、彼女がいた場所を眺めている。
どこか誇らしげなそんな微笑みを見て、ルグィンの金色が少し柔らかくなる。

「…じゃあ、荷物を運ぼうかな。」

「あれ、お前が余所見している間に持っていかれたぞ。」

「え…。」

そう言われて荷物を下ろした場所に荷物が忽然と消えているのを見て、その早業にファイは口をポカンと開けてしまう。

唖然として黒髪の少年を見上げる。

「じゃあ、他を手伝いに…。」

「なら、俺の道連れになれ。」

言葉を返すより先に、さっきやっと離した手を握られる。
そしてファイの身体は後ろへとぐい、と引っ張られる。
それでは言葉が出そうにも出ない。

すたすたと屋敷の門へと歩くルグィンに流されて、ファイはそれについていく。
帰ってきたのにもう一度外へと連れ出される。

どこに行くのかは聞いていないけれど、なぜか分かる気がした。

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