空色の瞳にキスを。
冬でも花が咲き乱れる草原を眺めて、ナナセはくすりと笑う。

「やっぱり、ここなのね。」

笑みを含んだ声でそう言って、草の上に座る黒猫の少年を見詰める。

ここはルグィンが連れ出してくれるあの山の一角。
相変わらず色とりどりの花々が咲き乱れている。

二人で屋敷を抜け出す時には、必ずといって良い程ここへと足が向く。

いつしかナナセ自身がこの場所に行くのを楽しみにしていると、そう気付いたのはつい最近のこと。

この場所に来ることは嬉しいけれど、悪いと思うからナナセは口を開く。

「でも、皆忙しそうなのに、手伝わなくていいの?」

「平気。
二人いなくなったって、あんなに人数いるんだから平気だって。

だから少しぐらい、いいだろ。」

小さく目を伏せて、自分の側の草をぽんと叩くから、ナナセは隣へ座る。
冬の始めに二人が座ったあの距離よりも近いのは、あの時よりも寒さが厳しいからだけではないはず。

肩と頭が触れ合う距離。
二人になれば晒される銀髪と黒猫の耳は、二人の信頼の証で。

冬の寒さを増すような冷たい風が風の音を伴って広いこの場所に吹き乱れる。

流れた銀髪がふわりと風に流れて、金色の瞳に写り込む。

その美しさは、彼の息を止める。

冬空と太陽の光に煌めくそれに、ルグィンがゆっくりと手を伸ばす。

風になびいた銀髪を黒猫の少年の細くて長い指が優しく包む。

草花に視線を走らせていて、隣の気配に気付かなかった銀髪の少女は、大きな少年の手にびくりと肩を震わせる。

「ナナセの髪、綺麗だよな。」

低くて優しいそんな声が彼女の耳を震わせる。

知らず知らずのうちに彼女に話す時だけ時々甘い響きを含むそれは、ナナセの背中を撫で上げる。

右隣を向けば、するりと髪に手を差し入れて銀を梳かれる。

その手の奥に見える黒猫の表情の柔らかさが、ナナセの胸を鷲掴みにして。

いつもよりも上がった口角。
いつもよりも優しい金に縁取られた瞳。

─目が、離せない。


きゅ、と息が止まって。

なぜか泣きそうになる。

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