空色の瞳にキスを。
「お前の隣に立ちたいと言ったあの二人も、俺も。
お前の道連れだぞ。
二人もあいつらなりに覚悟は出来ていると思う。」
ナナセからの答えはなくて。
空に似た瞳はまた悲しさを帯びていく。
またナナセの薄い唇がきつく結ばれる様子に、ルグィンが耐えかねる。
「俺だって、ナナセと同じように覚悟している。
─覚悟している人間を見下すなよ。」
いつもより強い声にナナセの目が冷まされる。
冷水を浴びたように、はっきりとしていく。
─確かに、そうだ。
─あたしの周りが傷付くのが嫌で、みんなに迷惑をかけないように独りでやりたいと思っていたけど。
─それはちょっと違うんだ…。
─みんなだって、心があるんだ。
─覚悟があるんだ。
それを分かってしまえば、ナナセの世界はまた違う色に見えてくる。
「本当だね…。
あたし、間違ってたね。」
空に瞳を向けながらぽつりと落とされたナナセの掠れ声は、ちょっと悲しくて。
ルグィンはなにも言わずにナナセの方へと体ごと向く。
衣擦れの音に、ナナセは軽く視線をやって、目を見張った。
ルグィンが自分に向かって頭を下げていた。
何事かと固まる彼女をよそに、黒猫の少年は言葉を繋げていく。
「それから、俺からも頼む。
─この国を、救って。
俺みたいな人の道から外れた奴、作らせないで。
あいつらみたいな無理やり魔術師にされるような奴、作らせないで。」
声に含まれた悲しさごと、銀の少女はは汲み取った。
深々と下げられた黒猫の頭の横に置かれた手を両手で拾い上げて、口を開いた。
銀の王女は異形の少年の右手を胸の前まで持ち上げて、誓うように、厳かに。
「約束する。
ルイ国王女、ルイ・ナナセの名に懸けて。
平和で皆に優しい国、作るから。」
空色をした瞳は、強い光を秘めて、奥の奥まで澄んでいて。
「だから、だから…。」
言い淀んで泳ぎ始める瞳の少女の次の句を、ルグィンは急かさずじっと待つ。
「だからお願い。
あたしに、力を貸してください。」
今度はナナセが頭を下げた。
髪を風に遊ばせて、少女は握ったままの少年の右手の指に自分の額を付ける。
─そんなの。
─答えは、決まっている。
その手をそっと握り返して、今度はルグィンが自分の方へと引き寄せる。
「ルイの王女に、未来永劫の忠誠を。」
いつもより小さくて低い黒髪の少年の声は、目の前の少女に確かに届く。
ルグィンは微笑みながらナナセの左手の薬指にそっと口付けを落とした。
その体勢のまま、金の瞳がナナセを見つめる。
上目遣いで見上げてくるルグィンの口元は楽しそうに笑んでいて。
「ナナセになら、いくらでも力を貸すから。」
言葉を付け足して、得意そうに見上げてくる黒猫の少年の光に、ナナセの涙腺が緩んだ。
お前の道連れだぞ。
二人もあいつらなりに覚悟は出来ていると思う。」
ナナセからの答えはなくて。
空に似た瞳はまた悲しさを帯びていく。
またナナセの薄い唇がきつく結ばれる様子に、ルグィンが耐えかねる。
「俺だって、ナナセと同じように覚悟している。
─覚悟している人間を見下すなよ。」
いつもより強い声にナナセの目が冷まされる。
冷水を浴びたように、はっきりとしていく。
─確かに、そうだ。
─あたしの周りが傷付くのが嫌で、みんなに迷惑をかけないように独りでやりたいと思っていたけど。
─それはちょっと違うんだ…。
─みんなだって、心があるんだ。
─覚悟があるんだ。
それを分かってしまえば、ナナセの世界はまた違う色に見えてくる。
「本当だね…。
あたし、間違ってたね。」
空に瞳を向けながらぽつりと落とされたナナセの掠れ声は、ちょっと悲しくて。
ルグィンはなにも言わずにナナセの方へと体ごと向く。
衣擦れの音に、ナナセは軽く視線をやって、目を見張った。
ルグィンが自分に向かって頭を下げていた。
何事かと固まる彼女をよそに、黒猫の少年は言葉を繋げていく。
「それから、俺からも頼む。
─この国を、救って。
俺みたいな人の道から外れた奴、作らせないで。
あいつらみたいな無理やり魔術師にされるような奴、作らせないで。」
声に含まれた悲しさごと、銀の少女はは汲み取った。
深々と下げられた黒猫の頭の横に置かれた手を両手で拾い上げて、口を開いた。
銀の王女は異形の少年の右手を胸の前まで持ち上げて、誓うように、厳かに。
「約束する。
ルイ国王女、ルイ・ナナセの名に懸けて。
平和で皆に優しい国、作るから。」
空色をした瞳は、強い光を秘めて、奥の奥まで澄んでいて。
「だから、だから…。」
言い淀んで泳ぎ始める瞳の少女の次の句を、ルグィンは急かさずじっと待つ。
「だからお願い。
あたしに、力を貸してください。」
今度はナナセが頭を下げた。
髪を風に遊ばせて、少女は握ったままの少年の右手の指に自分の額を付ける。
─そんなの。
─答えは、決まっている。
その手をそっと握り返して、今度はルグィンが自分の方へと引き寄せる。
「ルイの王女に、未来永劫の忠誠を。」
いつもより小さくて低い黒髪の少年の声は、目の前の少女に確かに届く。
ルグィンは微笑みながらナナセの左手の薬指にそっと口付けを落とした。
その体勢のまま、金の瞳がナナセを見つめる。
上目遣いで見上げてくるルグィンの口元は楽しそうに笑んでいて。
「ナナセになら、いくらでも力を貸すから。」
言葉を付け足して、得意そうに見上げてくる黒猫の少年の光に、ナナセの涙腺が緩んだ。