空色の瞳にキスを。
言葉をゆっくりと理解したルグィンは風の吹く中でまた、切ない笑顔を見せた。

「言うと、思ってた。」

隣で微かに聞こえた、声なき笑い声にナナセがルグィンの横顔を見つめる。

「知ってたの…?」

驚きで震える声に、黒髪の少年は間を置かず返す。

「別に。
でも、優しいお前のことだから。

きっとあいつらを放って国から逃げ出すことなんて出来ないと思ってた。」

ナナセはじっと視線を投げてくるルグィンから顔を背ける。

決めつけのように言われたが、その言葉は大半が真実で。
あまり言葉に感情を含めない彼の声がやけに優しく自分を包み込んでくれて。


─優しいから。

─ナナセは自分を低く見ているようだけど、優しくて責任感が強い奴だから。

少年の心に鮮やかに浮かんだ言葉までは言わずに、彼は辛うじて飲み込む。

金の視線に負けたナナセは俯き顔が見えないようにするが、ふわりと吹いた風がまた少女の髪を巻き上げて。

銀の隙間から影を抱えた空色の瞳を見せる。
悩みながらも、弱さを見せながらも必死で前に進もうとする青の瞳のこの少女。

─一人で立てるなら、無理してでも独りで立って他人に迷惑をかけないように頑張るような奴だから。

だから、そんな彼女の力になりたくて。


黒髪の少年は念押しするように以前言った約束をまた口にする。

「お前がどんな道を辿っても、俺はお前の道連れだ。

そんなことを一人でやるなんか、言うなよ。」

誓いにも似た低い響きに、ナナセが銀を揺らして顔を上げる。

今度口を開くときには、一人でやると言うはずだったのに、ルグィンに先に釘を刺された。
目を丸くして何故かと目線で問い掛けてくる彼女。

だから黒猫の少年は、揺らがない強い瞳でまた言葉を紡ぐ。

「こうなる覚悟はしていた。
お前が王になりたいと言う気がしていたから。
その上で、俺は道連れになりたいと言ったんだ。

第一、お前独りで王座につくなんて、無謀だぞ。

なるまでも、なった後も、信頼できる仲間がいないと話にならないだろ。」

ルグィンはそう言って、微かに笑った。

国を取り戻すなんて、端から見れば馬鹿げたことかも知れないけれど。

ルグィンは背中を押してくれて。

ナナセを射抜いたルグィンの瞳は、王座につきたいと言った時のナナセと同じような、強い決意を秘めていた。

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