空色の瞳にキスを。
「あたし欲張りなの。

みんながあたしをなにかを捨ててあたしといるのなら、捨てたなにかも出来ることなら拾いたいの。」

泣き笑いみたいな笑い方で、肩を揺らしてぎこちなく小さく笑うこの少女。
その目をまっすぐ見て、ゆっくりと尋ねる。

「どうやって?」

彼自身のその声音がいつもよりも優しいものだなんて、その声にまたファイの眉が下がったなんて、彼はまだ気付かない。

彼の問いに、黒髪の少女が一度唇を引き結んだ。

ファイの白い喉がゆっくり上下したのを黒猫は視界に捉える。

それからゆっくりと口が開いて、少女の朗々とした声が冷たい空気に広がった。

「…あたしが王様に、なって。」

数秒沈黙が支配して、ファイとルグィンは二人ともが真剣な面持ちで見詰め合う。

二度目の微風が吹いたとき、金色の形がふわりと歪んだ。

ふはっ、と吹き出した少年は、口元を手で隠して少女に笑う。

「…お前なら、出来るよ。」

笑いかけられた少女は、いつもは笑わない目の前の少年の笑う綺麗な声に、どきりとする。
魔術を使っていないために夜目が利かないファイと異形のルグィンでは見え方が違う。

見ようと思えばその顔を魔術を使って見ることはできた。

けれど珍しい彼の笑顔を心を揺すった声に手一杯で、ファイの思考はそこまで至らなかった。

目を丸くした、声が出ないとでもいうようなファイの表情を見ながら、ルグィンはまた口元を緩めた。


─こいつの王への執着は、まわりへの心と使命感。

─優しい心の持ち主だから、後押ししたくなる。


次の言葉を生もうとして、脳より先に口が素直に動いた。

「─そんなお前、嫌いじゃない。」

一言、口をついて失言が生まれた。

暗に好きと言っているような、その言葉に少年が気づいた頃にはもう遅くて。
言葉は取り消すことができなくて、ルグィンの脈は早くなる。

目を丸くした彼女は言葉を落とさずにじっと彼を見詰めていた。

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