空色の瞳にキスを。
パーティーが終わるまで、二人はそこにずっといた。

幸い椅子があって、そこに腰を掛けて会場や庭を眺めたまま、言葉を浮かべずに二人は時間を過ごした。

会場が暗くなり、皆が帰り終えた頃に、やっとファイが声を発した。

さっきのナコの言動を思い出して、思い詰めたような表情で口を開く。

「とうさんの従兄弟だって言うなら、あたしから見たら叔父様でしょう?
あたしの父方の叔父様たちや…父方の親戚たちはみんなどこかへ消えちゃったのに…。

探しても探しても、見つからないんだ…。」

力なく首を振る彼女に、ルグィンは遠慮がちに声をかける。

「お前の父方の親戚って王族だろ?
それって…。」

「分かっているよ。
望みは薄いことくらい。」

夜風に首を振ったファイの黒髪が揺れる。

彼女の悲しい諦めた顔は、目の良いルグィンには鮮やかに写った。

「ナコはそんな人を信じているのね。
操られているわけではなく、虚構を信じてるのね。」

馬鹿にしている訳でも、怒気を含んでいるわけでもないその声は、透明だけど、どこか深い響きをしていた。

「そうだな。」

返した声は、素っ気なくて、すぐに白い息に変わる。
ルグィンは視線を感じるが、向かい合い座っている彼女の方を見ようとはしない。

夜の深い闇にぽつぽつと見える、中庭を挟んだ屋敷の向こうの棟の明かりを見ていた。
そうしておかないと彼女の両目に見透かされそうな気がしたから。

「ルグィンの仲間でしょう?

あたし、二人が敵になるのは嫌。」


唐突に冬の空気に染み込んだのは、強さを孕んだ少女の声。

夜独特のすべてを包み込むような空気の中で、強く閃いて消えた言の葉は、黒猫の耳にも強く刻まれた。
強い響きは少年の心を揺さぶって、だけど感情を隠すのが得意なこの少年はまだ中庭を見たまま、声を紡いだ。

「俺は別に構わないけど。」

「ルグィン、ナコが自分で敵だと言った時、悲しそうな目してたもん。」

咎めるように落とされた少女の声に、やっとルグィンは彼女の目を見た。
黒猫を待ち構えていたのは、ひどく真剣な黒い瞳で、分かっていたのに目を逸らせなかった。

─変なところばかり見ているやつ。

心に浮かんだ言葉は、皮肉を込めているはずなのに愛しさがそれより上回るから自分で嫌になり、唇を曲げる。

「絶対、嫌だ。

ナコを敵になんかしない。」

強い決意を秘めた瞳でそう言うと、固かったその表情をくしゃ、と崩して笑いながら言葉を繋げた。

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