空色の瞳にキスを。
そう言いかけた時、背後から背中にぬくもりが触れた。

「俺が組む。」

隣を見上げれば、前にいる二人の男をまっすぐ見つめる横顔があった。

「ルグィ……?」

「俺が、こいつと組む。」

真っ直ぐに男たちを見つめるその横顔を、ユリナはただただ見上げるだけ。視線の先の金色の瞳は、やけにきつい光を放つ。

「お前は?」

男たちが、彼を探るような瞳で見る。帽子を深く被り直して口を開く。

「……シュン。」

そう、一言だけ呟いて右手でユリナの左腕を引く。あ、と小さな声がユリナから零れた。

ぐらり、とユリナはバランスを崩して、腕を引っ張った彼の右手で受け止められる。屈んだ彼の細くて長い髪が頬に当たり少しだけくすぐったい。

「──なんで俺を指名しない。」

彼は彼女にぼそ、と耳元で小さな声を送る。

「……え、」

顔を上げた少女は、苦しそうな表情を見せた。今にも泣き出しそうな瞳に、ルグィンはひやりとした。

「……わるい。」

「……頼って、いいの?」


ルグィンは悟る。ユリナ──ナナセは、頼ることをほとんど知らないことを。
彼も頼ることは苦手だが、ここまで孤独には生きていない。ルグィンは右手を彼女の頭に乗せてあたたかさを分ける。

「俺を信じられるなら、頼れよ。」

ひどく真剣な金色に、ユリナは気圧されした。

「……俺がユリナごと守る、から。」

ルグィンは瞳を合わせて、ユリナへ呟いた。
ユリナはどうしたら良いのか分からなくて、言葉をなにも返せなかった。守られるなんて、久しい。
ぐ、と堪えた空色の瞳を隠すように彼女の髪を乱す。


「作戦会議は終わったのか?」

首狩りの片方がにやにやと下卑た笑いを見せた。

「うん。待ってくれてありがとう。」

彼女の曖昧さは薄れることなく、闘いの前でさえ穏やかに笑って答えた。

少年と銀の少女の二人組と首狩りが闘うということで、まわりの野次馬たちは早く始まらないかとうずうずしていた。

ユリナたちが立つ反対側の足場に二人の男が上がると、いちだんと群衆が騒がしくなった。

足場の端に立つ男ふたりは、楽しげに下から見上げる知り合いに手を振っている。相手はふたりとも剣を使うらしい。

「四人、準備はいいか?」

下から審判役が声をかけると、それぞれが合図を返す。

「READY──」

それぞれが武器を構えた。

「──GO!」

闘いが始まる。

四つ、踵の音が鐘のように高く鳴り響いた。
< 82 / 331 >

この作品をシェア

pagetop