【BL】俺がお前にできること
そんなの……、
「…嘘だ」
だって……今まで俺を小馬鹿にしてただけじゃないか。
「嘘じゃない」
そんな真顔で俺を見たって、説得力ないから。
確かに、助けられたのも事実。
俺、泣いてたし、それ見て抱きしめてもらった。
でも、好きならあんな酷い言葉とか試す行動だとか、しないはずだ。
「―――…」
そんなときトイレに入ってきた誰かの声が聞こえ、それに一瞬気を取られた剛さんの握力が緩んだ。
その瞬間を逃すまいと腕を振り払って、みぞおちに一発パンチ喰らわせて鍵を開けた。
「……っ、」
ひゅっと喉が鳴るだけで声が出ない。それほど恐怖を感じたのかな、俺…
バンッと音が響いて扉を開けて
出入口へ走っていく。
すると、入ってきたのであろう“だれか”にぶつかり、それすら振り払う。
それなのに、その“だれかに”肩を掴まれて逃げられなかった。
離せ…っ、早く逃げないと
早く郁馬んとこに、行かないと…
「待って、翔太くん…!」
真後ろから、声が聞こえてびくりと肩が震えた。