Hurly-Burly 4【完】
何も言わずにいつも同様の雰囲気を放って、
最後に“いってきます”と言っていたかな。
「今度こそは心を鬼にして!!」
「いやいや、暴力反対だよ。
大体、兄ちゃん絶対殴り返される・・・・」
やめた方がいいって。
虫も殺せない兄ちゃんのへなちょこパンチ
が当たることは確実にない気がする。
「えー、兄ちゃん激強だよ!」
「激弱なら信じてやれそうだ。」
果たして、兄ちゃんは慰める気があるのやら。
もう、笑えてくるからヤダな。
真剣な話してる雰囲気だったのにこの人は
空気読めてないのかもしれないな。
「だけど、ひーちゃん傷ついたんだろ?
千治君たちは許すまじだよな。
折角、ひーちゃんのこと任せられると思ったのになー。」
「任せるなよ、大事な妹じゃなかったのか!?」
兄ちゃん、言ってること大丈夫か!?
「大事だよ。目に入れても痛くないほど可愛い。」
本気で目に入れたら確実に痛いと思う。
むしろ、生きてられないだろうな。
けど、嬉しくないわけない。
こんなの照れ隠しで兄ちゃんがおおっぴらに
愛情を降り注ぐあまりにあたしがクールでいなければ
という信念が生まれたわけで・・・兄ちゃん変わらない。
「ぶん殴ってやらなきゃな!」
「だから、兄ちゃんには無理だって・・・」
「きっと、千治君たちはひーちゃんを責めたり
しないはずだよ。」
ずっとずっとどこか責任を感じていた。
あたしのせいなんじゃないかとか警察にいち早く
情報を言うべきあたしの立場を引き受けてくれた
せいでみんなは疑われることになったんじゃないかって
思うと余計悔しくてやるせなかった。
落ち込んでる場合じゃないのになって思いながらも
そんな無限のループから抜け出せない罠に引っかかりそうだった。
窓から光り輝く星ぼしはキラキラと輝き出して、
部屋を照らし出すような光を放った。
引っかかっていたモヤモヤがスルッと解けていく
ような感覚に兄ちゃんの服の裾を掴んで決意を更に
固めるのだった。