Hurly-Burly 4【完】
伊織君は飽きもせずに煙草を吸い続けて、
ベンチの上で足を組んで座ってるけど、
視線だけはバッチリ合ってしまって逸らせなかった。
訳もなく頬に何かが伝っていくのが分かった途端、
2人が酷く動揺して見えた。
人に涙を見せるつもりなんてなかった。
泣くなら1人で誰にも気付かれないように、
だけど、思ったよりもコントロールが利かなくて
人前で零したのは誤算だった。
「・・・っ・・こ、これはあっ、汗だからな!」
一筋だけ零れおちたそれは少し離れた彼らにも
バッチリと見えたのだろうか?
「どうした?誰かに苛められたってなら言ってみろ。」
慶詩の声色がやけに温かくて涙腺が緩んだ。
「な、何でもないよ!め、目にゴミが・・・ああ、ゴロゴロ
して気持ち悪いな。」
「何をそんな強がるかな~?」
ごめんね、言えないんだよ。
だけど、我慢出来そうになかった。
矛盾してるのに、変なんだよ。
何か、調子でも悪いのかな?
―――――――知られたくないんだ。
早く、早く何か上手いこと言えって思いながらも、
距離を縮めてくる2人に背中を向けた。
「何も聞かないで、今のも見なかったことにして。」
足音が急にパタリと止まって深く深呼吸した。
「ほ、本当に、嫌だな。目にゴミが入って・・・
ありがちなことですからこんなことざらにある。」
駄目だな、さっき伊織君の言葉で立ち直ったはずなのに、
突き刺さった傷は深かったみたいで治まりが利かない。
な、何でこんなところで涙が出るんだよ。
あたしはポーカーフェイスだったじゃない。
こんなことで涙を流すことが悔しくて悔しくて堪らない。
本当に思う壺だ。あの秘書が望むシュチュエーションになったのが
みっともなくて心底情けなくてしょうがない。
「なら、俺の話少し聞いてけよ。おらよっ、目薬さしとけ。」
パシッと慶詩の方に振り向くと目薬を投げられて、
慌ててキャッチすると念のためにさした。
な、何とか変に思われなかった?
落ち着かずに、ソワソワしてるとキュッとスニーカーが
擦れる音がして前を見ると慶詩が自販機の前に立っていて、
煙草の火を消した伊織君が手招く。