Hurly-Burly 4【完】

その途端、反対側に慶詩がドサっと座った。

ロイヤルミルクティーと書かれた缶を手に

乗せられて、伊織君には缶コーヒーが渡った。

「そーだな。別にオメェに頼られたって悪い気はしねぇよ。

面と向かって言いにくいってならしょうがねぇーしな。

自分のタイミングで言いに来りゃいい。

気長に待つとしようじゃんってなことを俺らは思ってる。」

「な、何さそれ・・・そんな」

「焦んなくていいっつってんだろうが。

我儘でも何でも言いたいことあんだったら

無視せずに聞いてやっから言ってみろ。」

な、何でそんな優しい言葉をかけるんだ。

あたしは何も言えないのに。

「な、何を考えてるんだ!?ドッキリを仕掛けるんだな?

あたしを驚かせてやろうって魂胆なんだな!!」

「はぁ。お前の被害妄想には呆れを通り越しちまったな。」

「可愛げがねぇってのは本当のことだったんだな~」

本当は嬉しくてしょうがないよ。

だけど、あたし自身のことだから言えない。

甘えたらいけないと思うから頼ってはいけない。

こんなことに巻き込めるわけ無い。

絶対に、一ノ瀬のことでみんなの手を借りたり

なんてするわけがないんだ。

だから、誤魔化すあたしに気付かないでね。

「こっからは、俺個人の話だから妄想せずに聞けよ。」

「慶詩にしてはムードを作るのだな。」

「確かに~ひゅーひゅー」

「黙って聞いとけ!」

静寂なバッティングセンターには慶詩の声が

そっと響いてやけに鮮明だった。

「そもそも、俺は人を信じたりしねぇー主義よ。

我が道を行くってのは俺なりのポリシーだ。」

「あー、だから、自己中心的なのか!」

「失礼なヤツだな。けど、仲間が出来る内に

正直そんなくだらねぇポリシーなんて捨てちまえば

いいとさえ思えてきたわけだ。」

缶をプシュッと開けると香りが広がった。

温かい液体を喉元に流すとふわりと優しく

包み込まれるようなそんな空気が流れた。

「それも上手くいくわけでもなくて、一度染み付いた

習性ってのは厄介なもんなんだよな。こんな身なりだと

正直周りが全部敵に見えちまってわけがねぇ。」

チラッと慶詩の横顔を見るとふざけてる様子もなくて、

きちんとあたしに何かを伝えようとしてるんだって思えた。

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