Hurly-Burly 4【完】
だから、母さんに出来たことがあたしに出来ない
わけないんだよね。
『それはね、日和がお家を大好きで居ればいいんだよ。
それだけで多分すごく頼もしいから。日和はお家好き?』
「す、好きだよ!お家も父さんも母さんもお兄ちゃんも
兄ちゃんも大好きだよ。」
そのために、あたしは戦いに行くと決めた。
たった9歳で決めたことを16になる春に承諾するだけのこと。
今更、何も変わりはしないの。
自分の大事なものぐらいどうにか守ってみせる。
それが、強い女だって母さん言ってたよね。
『日和、母さんも大好きよ。だから、約束ね。
母さんと日和だけの秘密。女は秘密があってナンボよ。』
「母さんにも秘密がいっぱいあるの?」
『・・・どうかしらね?』
小さなあたしは母さんの言葉を大事に守ってきた。
そんな母さんがそのことを知ったのはあたしが中学に
入る前のことで9歳のとある日から数年経った頃。
――――日和当時9歳―――――
学校帰りに黒塗りの高級車が帰路に滑り込むように
入ってきて、咄嗟に逃げようと思った。
その日はサユが風邪をひいて休んだ日で下校する
のが1人で丁度良かった。
サユを巻き込むことなくあたしだけのところを
最初から狙っていたんだろうけど。
その頃は丁度不審者には気をつけましょうと
先生が口を酸っぱくして言ってたから大声出して
防犯ブザーを鳴らそうとしたんだ。
そしたら、助手席からスーツ姿の男の人が現れて
ニコリと顔に張り付いた笑みを浮かべて言った。
『お嬢様、お初にお目にかかります。』と。
小学生ながらどこの頭可笑しな人が現れたんだろう
と身を強ばらせて一定の距離を取った。
『そんなに怖い顔をしないで下さい。貴女様を
取ってどうにかしようとは思ってませんから。』
この顔は元々なんだけどという暇もなく、
ニコリと笑うスーツ姿の男に手を差し出された。