怪盗は静かな夜に出会う
そして半年の月日が経ち、彼らの目的通りに『怪盗ブルームーン』の名が世に知れた。
兄の行方を知るもの達の耳にも入っているだろう。
彼らの必要とする情報を持ち、更に彼らを脅かそうとしている月斗達の存在が。
『暁の祭杯』も、その必要な情報を持つ一品だった。
これを手にすればきっと接触があるのではないだろうか。たとえなかったとしても、彼らに繋がる手がかりになるのは間違いない。
一刻も早く兄を助け出したい、祖父を失って唯一の肉親となった兄へのその気持ちが月斗の全てだった。
だから、分かる。
静夜が兄を探したいと思う気持ちも。そのために『暁の祭杯』を取り戻したいと思う気持ちも。
そんな彼女の願いを、月斗が跳ね返せるわけがない。『報酬』だとか『利益』の事なんて、口先だけだ。
あの時見た静夜の必死の表情が、脳裏によみがえる。
「絶対に、取り戻してやるから」
自分の心に言い聞かせるように彼は呟いた――――――


