《続》跡目の花嫁さん~家元若旦那の危ない蜜月~
「・・・」



「俺は自分のそばで、泣いてる女を放置出来る冷たい男じゃない…」

濱部社長はそう言って、私との間の距離を詰めて肩を抱いてくれた。


「すいません」


涙を堪えて、私は彼の肩口に遠慮がちに頭を乗せた。


「何してるんですか?」


栗原さんがずれた眼鏡のブリッジを押し上げながら、怖い顔で睨んでいた。



「総会が終わったからと言って…こんなホテル内の目立つ場所で…困ります!!」


私は慌てて、頭を上げた。



「緑川夫人…あなただって困るでしょ?」


「栗原…そう彼女を責めるな…」


「責めてなんていませんよ…二人して…いつから知り合いですか?」
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