自分の中で
周りの子供達は、いつもの先生とは違うので、特に女の子達は震えていた。
義男は本能で危険を察知して桜の枝と慎太郎を捨てて逃げ出した。 「こら待て川原。」
悲しいかな佐田先生は多分もう70歳近いのか、義男に追いつくわけがなかった。
「先生怖いよ。怖いよ。」
周りの子供達が泣き叫んでいた。
しかし我を忘れた佐田先生は、広大な庭を叫びながら義男を追いかけていた。
「このたけ~待たんかにゃあ。」
まったく意味不明な言葉を叫んでいた。
もちろん義男は習字教室を辞めさせられた。 母親は佐田先生に平謝りだった。
義男は香奈の化粧の匂いが若干残るこたつでため息をついた。
義男はまた目をつぶって今度は中学生に記憶を呼び戻していた。
義男は結構モテた時期であった。初恋愛も中学3年で終わらせていた。 まあ相手は隣りクラスの女の子で、名前は早紀だったと思う。
早紀は髪は茶髪で、ヤンキーだった。
いつも学校の門で朝、先生達に紙の毛の事で注意を受けていた。
義男はそんな早紀になぜか興奮を覚えた。
早紀と仲良くなるのは、そんなに時間はかからなかった。
後はいかにして早紀とやることだけを考えていた。
両親がいない時に早紀を呼び出した。
しかし手も握れずに終わった。
知識だけは豊富な義男であったが。情けないやら。
早紀も格好はつけていたが、純情一直線であった。
限りなく想像はするが、なかなか行動は伴わない。まあ勉強なんて頭には入らない時期でもあった。
それから早紀とは、気まずくなり話すことも無くなった。
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