曖昧ショコラ【短】
ガチャリと音が鳴って、書斎から篠原が出て来る気配がした。


「お疲れ様です」


「あぁ」


「原稿、出来ましたか?」


「お前は相変わらずそればっかりだな」


面倒臭そうにため息をついた篠原は、眉を寄せたまま椅子に腰掛けた。


「……腹減った」


あたしの質問には答える気が無い彼に、出来上がったばかりの夕食を出す。


「どうぞ」


ホカホカと湯気を漂わせるハンバーグを前に、篠原の表情が緩んだのがわかった。


「和風ハンバーグか」


食事前の彼はどこか穏やかで、いつもほんの少しだけ戸惑いが生まれる。


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