曖昧ショコラ【短】
喜びを感じつつあった心を叱責し、慌てて首を横に振る。


あたしは、こんな事で喜んでいる場合では無い。


確かに、篠原から原稿を受け取る為にも彼に満足して貰う必要があるし、あたしだって作った物を褒められたら嬉しくはなる。


ただ…


女としては料理で一喜一憂するのは微笑ましい事なのかもしれないけど、出版社で働く人間としてはハッキリ言って不本意である。


だって、あたしが本来やりたい仕事は家事では無く、編集者としての仕事なのだから…。


だけど、入社以来ずっと篠原を担当しているからなのか、未だに編集者らしい仕事をした記憶がほとんど無いのだ…。


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