わたしは彼を殺した、そして彼に殺される
拾弐
その夜、あの人から電話があった。

「元気になった?」

元気なわけが、ない。

でもこの出来事を話しても
信じてくれるわけもないし…

わたしは誰を信じたらいいの?

わたし、ほんとに生きてていいの?

そんなことを考えながら彼の言葉に、

うん、うん、わかった、と返事をする。

内容なんて覚えてない。

「ゆっくり寝て忘れるのが一番だよ」

そう言って電話は切れた。

心配してくれてるんだ。

それは、ちゃんと伝わるんだよ。

でも、あの人には全てを話せない。
心のどこかに、壁を感じていた。

彼には…

どんな些細なことでも話していたし、 彼もそれをきちんと聞いてくれた。

比較なんてしちゃいけないんだけど。

無意識に比べてしまう自分がいる。
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