わたしは彼を殺した、そして彼に殺される
あのときと同じ。

…まだ、あいつが?

それから、

すーっと指輪が指から抜けた。

窓に向かって、ゆらゆらと進んでいく。

彼はさっきわたしに話した。

もうひとりの自分は消えたと。

あいつは、もういないはず。

でも、指輪はまた…

ベランダの向こうで揺れたまま。

わたしは立ち上がってベランダに出た。

外はちらちら、雪が舞っていた。
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