本の森と狼さん。

いつも通りつまらない



「行ってきます!!」


「はい、行ってらっしゃーい」


社宅の重い扉を開け、
元気よく学校へ向かう

母さんがいつも
階段を降りるまで見送ってくれる


---あとちょっとで階段、


「じゃあねー」


階段手前でニコニコと振り返り
母さんに手をふる

母さんも「がんばってねー」と
優しい笑顔で返してくれた


渡辺友恵、高校1年生。

いつも通りの朝。


階段を降り出した私に
さっきまでの笑顔は無かった。

学校へ向かう足取りは重く、
どこかでサボろうかと悪魔が囁く。


なんとか学校へむかうバスに乗り込み
未練がましく社宅の見える右奥の席に座る。


いつも通り。いつも通りの朝だ。


学校へ行きたくないのは……


居場所がないから。



中学時代、バスケ部で
たくさんの友達に囲まれ、
彼氏が居たこともあった私。


顧問の推薦や両親の意見で
超難関私立高校『鳳凰高校』へ
推薦入学した。

正直、レベルが違いすぎて
行きたくはなかった学校。


本来の人見知りを発揮し、
なかなか友達ができず
毎日本ばかりを読んでいた。

ついたアダ名は 本の蟲。


話しかけてくれる子なんていない中

ハイレベルな勉強についていくために
授業が終わると必ず先生に質問した。

補習もたくさんしてもらった。


ひいき女。


またアダ名が増えた。


休み時間は本を読み
昼休みは図書館、
通学ラッシュを避けるため
閉館まで放課後も図書館。


10月の今となっては
それが私の日常になっていた。
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