本の森と狼さん。
:
:
:
:
キーンコーンカーンコーン


終業のチャイムが鳴り
号令をしてすぐに教室をでる。

向かう先は、


図書館。


図書館は校舎から少し離れていて
赤レンガの趣のある2階建てだ。

一般開放もされるほどスゴい。





イチョウのじゅうたんを通り
図書館へ入ると
ほのかに本の香りがする。

この香りと静かな館内を灯す光が

私は大好きだ。



2階の一番左奥、
本棚に隠れた薄暗い場所に
4人がけの机が1台ある

窓を見れる左側が私の特等席。


見つかりにくいし
薄暗さがちょうど良い。



私は鞄を横の椅子に置き、
読んでいる最中の本を読む。


『愛ゆえに』


父さんが勧めてくれた本だ。


愛を信じて疑わなかった主人公
ボスタフが令嬢のクリスティーヌに
あっけなく捨てられる…


いま読んでいるところまでだと
ストーリはそんな感じだ。



----ボスタフは可哀想だな

  愛なんか信じたばっかりに…

  可哀想?

  あぁ



  愚かだ。


:
:
:
:


集中して読んでいたのか
気づけば目の前の窓は真っ暗だった。


----帰ろう


カバンが置いてある横の椅子へ顔を向ける


………と、



「ヒッ……!」


わたしは本を持ったまま硬直した。


「どうも~」



だって…



「おーい、大丈夫?」



だって



「おーい、聞いてんのかー??」




知らない男子生徒がいたんだから。





< 3 / 7 >

この作品をシェア

pagetop