本の森と狼さん。


「渡辺、こっちに男子生徒こなかったか?」


そのすぐ後に中沢先生がきた。
図書館内を叫びながら探していたからか
息づかいが荒い。



「ぇ、あ…あの」


----あっちに行きましたよ


教えようにも中沢先生は
1人息を切らしながら
ブツクさと何かを言い始めた



「ちくしょう、
なんて逃げ足の速いやつだ…
2年になってさらに速くなったな…」



「あ、あの…あっちに」



やっとの思いで
「浜尾」が消えた先を指差す



「おぉ!そうか!!ありがとうな、渡辺」



中沢先生はニカッと笑って
私の指差す方へと向かう



「あ、渡辺」



一度本棚へ消えたあと
チラッと顔だけをのぞかして
中沢先生はわたしを呼んだ



「はぃ?」



「浜尾になにかされたか?」



----なにか…
  あの訳の分からない言いがかりは
  なにかされたことになるのかな?

  ならない、よね



「いえ、…特には…」


わたしがそう言うと
少し間を置いて



「アイには気を付けろよ」



最後にもう一言言い残し
完全に見えなくなってしまった





わたしに言いがかりをつけてきた彼


「浜尾」


----2年だし浜尾さん、か


  なにに気を付けたらいいんだろう


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