ぬくもりをもう一度
「昨日は、一体

 どういうつもりだったんだ?」


単刀直入に問いかける。

香澄との温かな時間に

割って入っただけでなく、

関係にヒビまで入れた野々原の行動が、

どうにも理解できない。


野々原は口を固く閉じたまま

ぼうっと景色を見つめる。


俺達の間を、和らげるかのように

優しい風が吹き抜けていく。


「俺は、野々原と

 付き合ってるつもりは、な……」


「あの人、阿久津くんの

 好きな人なんでしょ」


視線を外へ向けたまま聞く野々原の声が、

なんだか弱々しい。


「それは、野々原には関係ないだろ」


「関係あるのよ!

 私は、阿久津くんのことが、

 好きなんだから」


ようやく視線を合わせた野々原の目は、

いつもの勝気なものとは全く違い、

微かに揺れ動いていた。





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