ぬくもりをもう一度
「なんで……。

 なんで智くんがここにいるの?

 智くんとは、

 もう終わったはずじゃない」


後ろに立っている川尻へと振り向き、

香澄が興奮気味に話す。


確かに、

さっき香澄は俺に

『婚約解消した』と言っていた。


だったらもう、

川尻と香澄の間には何もないはずだ。


それなのになぜ、ここ九段下に

川尻が来ているというのだろうか。


俺に向けていた鋭い視線を、

柔らかいものへと変えながら

ゆっくり香澄へと滑らせる。


「香澄ちゃんは、そう思っているんだね。

 でもそれは、香澄ちゃんの

 一方的なものなんだよ」







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