ぬくもりをもう一度
図星だ。


同僚の、

しかも女の名前になんて

興味などないのだから。


俺の中には

たった1人の名前だけで、

十分だ。


黙ったままグラスを傾ける

俺を見て、

女は「やっぱり」と呟いて

小さく溜め息をついた。


「野々原萌実(ののはら もえみ)。

 阿久津くんと同期入社なのよ、

 これでも。

 みんなからは

 “モエ”て呼ばれてる。

 ……こんなところで、

 自己紹介するなんて

 思ってなかったな」


そう言うと、

野々原は寂しげな目をして笑った。






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