後悔バス【短編】
俺は台所の椅子に腰を下ろすと、忙しそうに動く婆ちゃんに話かけた


『あのな、婆ちゃん。俺さ、ここに来るまでバスん中で夢見てさ…不思議な夢なんだ』


婆ちゃんは、あんたまたバスなんかで居眠りしてたのかいとか何とか言いながらも手はずっと、動いてた


どうやら、キンピラゴボウを作っている様だった


『婆ちゃん、それでさ、俺、ずっと心に引っ掛かってた事、解決できたんだ』


『へぇ…』


婆ちゃんは、キンピラを炒めてた


『実際は、夢だから相手にはちゃんと届いてないんだろうけどね』


『そんな事ないんじゃないかい。伝わったと思うよ』


婆ちゃんは手を止めない


『そうかな…』


婆ちゃんとこんなにゆっくりと話すのいつぶりだろう…


親が共稼ぎだったのと、俺は一人っ子だから、ほとんど婆ちゃんにベッタリだった


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