冷たい雨に咲く紅い花【後篇ーside実織ー】



「お待たせしました」


柔らかな声が聞こえ顔を上げると、
笑顔の世菜が、ドーナツの箱を私の方へと差し出していた。


告げられた代金を渡し、
ドーナツの箱を受け取る。



「ありがとうございました」


迎えてくれたときと同じ
元気な声で、
元気な笑顔で、

世菜が見送ってくれる。




遠くにいきかけた心を、
悟られないように、


「ありがとう、世菜」


〝笑顔〟で店を後にした。



< 79 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop