青空バスケ―番外編―
梨子に見つめられると、何だかおかしくなりそうになる。
そりゃ、今までだって何人かとは付き合ってきたけど。
こんな気持ちは梨子が初めてで……。
「……梨子」
まるで吸い寄せられるように顔を近づければ、自然と梨子が目を閉じる。
俺もそのままわずかに顔を傾け……
「ゴホン!」
……わざとらしい咳払いが聞こえたので
、俺は梨子から離れた。
「……何なんですか、先輩達」
明らかに不愉快そうな顔でこちらを見てくる先輩三人。
「あー、さっきから暑くね?
なんか暑いよな?愁」
「本当だな。
暑すぎて喉渇いてくるな
な?夏樹」
「後輩達は幸せそうなのに、俺達寂しいねー」
それを言うなよ、と鳴瀬先輩に突っ込まれる相沢先輩。
いまだに仲の良さそうな三人を見て、梨子は小さく笑う。
「仲良いんですね」
「んー、でも梨子ちゃん達には負けるねー」
相沢先輩の言葉に若干顔を赤くさせる梨子。
「あとあの二人にもな」
南雲先輩が付け足すようにそう言う。
あの二人。
そう言われた二人を見れば、岬は泣き止んでいて何やら物欲しそうに先輩達の持っているものを見つめている。
「カンちゃん、飲みたいのー?」
「飲みたいです……けど、」
出たな、酒好き……。
見かけによらず酒好きの岬。
「絶対ダメだからな!」
「分かってるよ!」
大和に言われるまでもなく、岬は我慢している様子。
ま、当然だな。
「よし!じゃあ、今日は大和と栞奈の結婚と懐妊を祝って朝まで飲むか!」
「え、鳴瀬先輩……?」
朝までって……ウチで?
「あ、でも栞奈は飲んじゃダメだからな。
睡眠もしっかり取らなきゃな」
「あの、鳴瀬先輩……ここで飲むんですか?」
「それ以外に何があるんだよ」
缶ビールを煽りながら鳴瀬先輩の代わりに南雲先輩が答える。
この人達って……本当……歳をとるごとに面倒くさくなってる気がする。
「梨子ちゃん、チューハイもあるよー」
「あ、はい!ありがとうございます!」
「ちょっ、梨子!」
相沢先輩から渡された缶チューハイを嬉しそうに受け取る梨子。
「いいなー……」
「あ、栞奈ちゃん!冷蔵庫にジュースあるよ!
それ飲む?」
「うん!」
「梨子ちゃん、俺も」
「え、大和君も?」
「あたしのこと気にしなくていいよ?」
「いや、飲まない。
栞奈の前では飲まない」
「嫁が我慢するなら、俺も……ってことか。
大人になったな、大和も」
うんうん、と嬉しそうに鳴瀬先輩が頷く。
ワイワイ、とみんな楽しそうに何の疑問も持たずに宴会を始めていく。
いやね……おめでたいのは分かるけどさ。
でも、一言だけ言いたいのは……
「……ここ、俺の家なんですけど」
—fin—