赤い月 肆
薫は鬼神の彼女を知っている。
凛々しく、気高く、美しい鬼。
誰もが跪かずにはいられない、威厳に満ちた神。
(でもって、こんなに可愛いンだからなー…)
そりゃモテるわ。
景時も、大変な女に惚れたモンだ。
元カレごときであんなに凹んでちゃ、先が思いやられる。
だから『勘違いシテルヨ』なんて、教えてやらない。
これはあのバカが乗り越えなきゃいけない壁。
薫は眉間の皺を解除して、うさぎの頭をゴツい手で撫でながら微笑んだ。
「うさぎサマのせーじゃねぇから。
景時なら、大丈夫。
もう少し待ってやって?」
「‥‥‥そうじゃな。」
うさぎも薫を見て少し笑った。