碧い月夜の夢
「……現実を…」
震えながらも、目を開ける。
凛々子は知っている。
ここが“あの時の”公園なら、泣いているのは女の子だ。
そして、その女の子がいる場所は、公園の一番奥にある小さな立体迷路の物陰。
心臓が、早鐘のように脈打っている。
凛々子は真っ直ぐに立体迷路に近付くと、その裏側に回った。
……いた。
赤いランドセルを背負った、ストレートのロングヘアーの女の子。
あろうことか、あの時と一緒で、ピンクのカーディガンに濃い灰色のプリーツのはいったミニスカートを履いている。
「……もう、大丈夫だからね」
震える手で、凛々子は女の子をしっかりと抱き締めた。
そして、公園の隅の暗がりに、睨むように視線を送る。
そこに立っていたのは、一人の中年の男。
ご丁寧にこの男まで、あの時と同じ格好をしている。
髪の毛はボサボサで、顔全体に無精髭を生やしていて。
男は汚い作業服を着込み、ギラギラとしたねちっこい視線で、こっちを見ていた。
凛々子は女の子を後ろに庇う。
「……あの時と同じなの…」
これは、悪夢だ。
中学3年生の夏休み。
部活を終えた帰り道の、おぞましい出来事。
あの中年の男はナイフを持っていた。
男はランドセルの女の子を、ナイフをちらつかせて脅していた。
怯える女の子の小さな手を引いて、連れ去ろうとしていて。
そこにたまたま、凛々子が通り掛かったのだ。
「何してんのよっ!!」
活発で、正義感の塊だった凛々子は、すぐに大声を上げた。
男は驚いて、嫌がる女の子を引きずるようにして逃げようとする。
凛々子は夢中で飛び掛かかり、必死に男の作業服を掴んだり引っ張ったりして。
その拍子に男が持っていたナイフが手を離れた。
いや、ただ離れたのではない、男は意図的に、ナイフが手を離れる瞬間に力を込め、凛々子を切りつけようとしたのだ。
思っても見なかった凛々子の出現に、男は慌てていたのかも知れない。
ナイフは地面に落ちるまでの間に、凛々子の左腕を深く斬り付けていた。
その時は不思議と、全く痛みを感じなかったのを覚えている。
――…ただ、血まみれになった自分の左半身と、地面に落ちたナイフが、この公園に申し訳程度に備え付けられている小さな街灯の明かりに反射しているのが目に入って。
その時、何を考えていたのかは覚えていない。
気が付いたらナイフを拾い上げ、男の腹に突き刺していた。
呻き声を上げて、倒れる男――。
震えながらも、目を開ける。
凛々子は知っている。
ここが“あの時の”公園なら、泣いているのは女の子だ。
そして、その女の子がいる場所は、公園の一番奥にある小さな立体迷路の物陰。
心臓が、早鐘のように脈打っている。
凛々子は真っ直ぐに立体迷路に近付くと、その裏側に回った。
……いた。
赤いランドセルを背負った、ストレートのロングヘアーの女の子。
あろうことか、あの時と一緒で、ピンクのカーディガンに濃い灰色のプリーツのはいったミニスカートを履いている。
「……もう、大丈夫だからね」
震える手で、凛々子は女の子をしっかりと抱き締めた。
そして、公園の隅の暗がりに、睨むように視線を送る。
そこに立っていたのは、一人の中年の男。
ご丁寧にこの男まで、あの時と同じ格好をしている。
髪の毛はボサボサで、顔全体に無精髭を生やしていて。
男は汚い作業服を着込み、ギラギラとしたねちっこい視線で、こっちを見ていた。
凛々子は女の子を後ろに庇う。
「……あの時と同じなの…」
これは、悪夢だ。
中学3年生の夏休み。
部活を終えた帰り道の、おぞましい出来事。
あの中年の男はナイフを持っていた。
男はランドセルの女の子を、ナイフをちらつかせて脅していた。
怯える女の子の小さな手を引いて、連れ去ろうとしていて。
そこにたまたま、凛々子が通り掛かったのだ。
「何してんのよっ!!」
活発で、正義感の塊だった凛々子は、すぐに大声を上げた。
男は驚いて、嫌がる女の子を引きずるようにして逃げようとする。
凛々子は夢中で飛び掛かかり、必死に男の作業服を掴んだり引っ張ったりして。
その拍子に男が持っていたナイフが手を離れた。
いや、ただ離れたのではない、男は意図的に、ナイフが手を離れる瞬間に力を込め、凛々子を切りつけようとしたのだ。
思っても見なかった凛々子の出現に、男は慌てていたのかも知れない。
ナイフは地面に落ちるまでの間に、凛々子の左腕を深く斬り付けていた。
その時は不思議と、全く痛みを感じなかったのを覚えている。
――…ただ、血まみれになった自分の左半身と、地面に落ちたナイフが、この公園に申し訳程度に備え付けられている小さな街灯の明かりに反射しているのが目に入って。
その時、何を考えていたのかは覚えていない。
気が付いたらナイフを拾い上げ、男の腹に突き刺していた。
呻き声を上げて、倒れる男――。