碧い月夜の夢
☆ ☆ ☆
凛々子ははっとして、辺りを見回す。
気が付いたら、女の子も、ナイフを持った男もいなかった。
目が覚めた訳ではない。
凛々子はまだ夢の中で、繁華街の光景も、公園の景色も、さっきと全然変わっていなかった。
「なるほどな」
いきなり声が聞こえた。
立体迷路の壁の上に、レオンが座っている。
「……何よ…」
瞳に涙をたくさん溜めて、凛々子はレオンを見上げた。
微かに息が上がっているのは、心臓の鼓動が尋常じゃなく早いからだ。
「人の過去を見るのがそんなに楽しかった!? 何で黙って見てるのよ! 酷いじゃない、何なのよこの世界は…っ…!!」
叫ぼうとしたが、最後の方は掠れて声にならなかった。
レオンは何も言わずに、よっ、と軽く掛け声をかけて立体迷路から飛び降りて、凛々子の目の前に立つ。
「んなもん見て俺が楽しい訳ねェだろ。結構ハードな人生送ってんじゃねェか、オマエ」
そう言われた時、凛々子の目から溢れた涙が頬を伝う。
今にも口をついて出そうな嗚咽を我慢するために、左手で口を覆って。
右手はずっと、長袖シャツの左腕を押さえていた。
押さえるというよりも、食い込むような勢いで握りしめて。
「…これが、知りたがっていた事実だよ。何故オマエがこの“テルラ”と繋がったのか。それは、この暗い過去をずっと引きずっているオマエの心が原因なんだ」
凛々子に近付き、そっとその右手を握りながら、レオンは静かに言った。
きっとレオンは、凛々子がテルラと繋がってしまった理由をある程度は知っていたのだ。
凛々子が聞いた時はっきりと教えなかったのは、その理由は凛々子を傷付けるだけのものだったから。レオンなりに気遣っての事だった。
この公園で起きた出来事によって凛々子が心に何らかの傷を負っていると言うこと。
その心の傷ーートラウマが、人間がこのテルラと繋がる理由なのだ。
「俺だってオマエのトラウマの原因を詳しく知ってた訳じゃねェよ。でもこれで分かったぜ。オマエが何故いつも、長袖のシャツを着ているのかがな」
レオンはグローブをはめた右手で、必死に泣くのを堪えている凛々子の左腕を撫でた。
添えられたレオンの手は、いつの間にか、食い込んでいた凛々子の右手を離している。
「俺はこの仕事のエキスパートだって言っただろ。どんな過去があろうと、俺はオマエを助ける。だから、俺を信じてオマエも戦え」
レオンは凛々子の両肩に手を置いて、真っ直ぐにこっちを見つめた。
その瞳は、勝ち気で自信に満ち溢れている。
凛々子ははっとして、辺りを見回す。
気が付いたら、女の子も、ナイフを持った男もいなかった。
目が覚めた訳ではない。
凛々子はまだ夢の中で、繁華街の光景も、公園の景色も、さっきと全然変わっていなかった。
「なるほどな」
いきなり声が聞こえた。
立体迷路の壁の上に、レオンが座っている。
「……何よ…」
瞳に涙をたくさん溜めて、凛々子はレオンを見上げた。
微かに息が上がっているのは、心臓の鼓動が尋常じゃなく早いからだ。
「人の過去を見るのがそんなに楽しかった!? 何で黙って見てるのよ! 酷いじゃない、何なのよこの世界は…っ…!!」
叫ぼうとしたが、最後の方は掠れて声にならなかった。
レオンは何も言わずに、よっ、と軽く掛け声をかけて立体迷路から飛び降りて、凛々子の目の前に立つ。
「んなもん見て俺が楽しい訳ねェだろ。結構ハードな人生送ってんじゃねェか、オマエ」
そう言われた時、凛々子の目から溢れた涙が頬を伝う。
今にも口をついて出そうな嗚咽を我慢するために、左手で口を覆って。
右手はずっと、長袖シャツの左腕を押さえていた。
押さえるというよりも、食い込むような勢いで握りしめて。
「…これが、知りたがっていた事実だよ。何故オマエがこの“テルラ”と繋がったのか。それは、この暗い過去をずっと引きずっているオマエの心が原因なんだ」
凛々子に近付き、そっとその右手を握りながら、レオンは静かに言った。
きっとレオンは、凛々子がテルラと繋がってしまった理由をある程度は知っていたのだ。
凛々子が聞いた時はっきりと教えなかったのは、その理由は凛々子を傷付けるだけのものだったから。レオンなりに気遣っての事だった。
この公園で起きた出来事によって凛々子が心に何らかの傷を負っていると言うこと。
その心の傷ーートラウマが、人間がこのテルラと繋がる理由なのだ。
「俺だってオマエのトラウマの原因を詳しく知ってた訳じゃねェよ。でもこれで分かったぜ。オマエが何故いつも、長袖のシャツを着ているのかがな」
レオンはグローブをはめた右手で、必死に泣くのを堪えている凛々子の左腕を撫でた。
添えられたレオンの手は、いつの間にか、食い込んでいた凛々子の右手を離している。
「俺はこの仕事のエキスパートだって言っただろ。どんな過去があろうと、俺はオマエを助ける。だから、俺を信じてオマエも戦え」
レオンは凛々子の両肩に手を置いて、真っ直ぐにこっちを見つめた。
その瞳は、勝ち気で自信に満ち溢れている。