碧い月夜の夢
「戦え…って…?」

「自分の過去と。んでもって」



 レオンは周りに視線を送る。

 いつの間にか、アルマの集団に囲まれていた。



「こいつらともな」



 その顔つきが、険しくなった。



「今は忙しいんだ。泣いてるヒマはねェよ。しっかりしろ」



 凛々子は、レオンの言葉を聞いて、少し深呼吸をした。

 そうだ、今は、泣いている場合じゃないんだ。

 ここは公園の一番奥で、逃げ道はない。

 レオンは凛々子の手を取った。



「……行ける。オマエなら大丈夫だ」

「うん」



 レオンと一緒なら。

 その言葉通り、この状況を何とか出来る気がした。


『大丈夫、君は1人じゃないから。逃げないで、真っ直ぐに現実と向かい合うんだよ』


 魔法の言葉を思い出して、凛々子はアルマの集団を一瞥しながら考える。

 ここは元々繁華街で、公園は凛々子の実家の近くにある筈なのだ。

 だから、この公園は、こんな所にあってはいけない。

 最早アルマの数は、公園全体を埋め尽くすくらいに増えていた。

 ……もしも。

 もしも、この公園ごと、アルマを消せたら。

 いくらこの世界がテルラでも、この場所を作り出しているのはあたしの夢なんだから。

 何でもアリだ。



「レオン」



 レオンの手をぎゅっと握り返して、凛々子は言った。

 アルマから注意を逸らさずに、レオンは答える。



「何だ?」

「昨日みたいに、飛べる?」

「あァ、オマエがその気なら、飛べる」



 凛々子は軽く頷いて、ゆっくりと息を吸った。

 とん、と、軽く地面を蹴ると、二人の身体が宙に浮かんだ。



「真っ直ぐに、現実を見つめて」



 凛々子は、小さく呟いた。

 逃げてばかりじゃ、何も始まらないんだ。

 ーーそれに。



「あたしは…1人じゃない」



 凛々子が呟くと同時に、空間が地面に引きずり込まれるようにして、あの公園がアルマごと消えていく。

 ひゅう、とレオンが口笛を吹いた。

 二人はそのまま川を越えて、繁華街に降り立つ。



「やれば出来るじゃねェか」



 身軽に体勢を立て直して振り返りながら、レオンは言った。

 それとは反対に、凛々子は不格好に道路に転がるようにして着地というより、落下していた。
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