風の恋歌


 彼はしばらくすると、彼女と連れ立って村へと向かった。
 人間達が暮らす村。
 私は風車と戯れながら、彼についていった。

 彼と彼女は、恋人同士なのだろう。
 もしかしたら夫婦なのかもしれない。
 とても、羨ましく思えた。

 だけど私は風。
 止まることが許されないウィンデーネ。
 思いを断ち切るように、私はそのまま雨雲を引き連れて駆けた。
 すぐに雨雲が、雨を吐き出す。
 ぽたりぽたりと、弱かったものが勢いを増し、しまいには強い雨になった。

 私は雨の中を駆けながら、泣いた。
 涙なのか、雨なのか。
 私の思いは報われない。
 叶わない恋。

 それでも、私はあの歌声を聞いていたかった。

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