風の恋歌
それから、毎日あの村へと通うようになった。
時には朝に、さわやかな日差しに乗って。
時には昼に、心地よい陽気を運びながら。
時には夜に、月の光を全身に浴びながら。
毎日飽きずに彼を探す私に、仲間達は呆れた。
「人間なんて、やめておきなさい」
「貴女の時間の無駄になるわ」
そういうことを言われたけれど、私はやめられなかった。
彼の歌声の虜になってしまったから。
一度、仲間も彼の歌声を聞いたけれども、彼女達は声に反応しなかった。
私が、生まれたときに聞いた「声」に似ていると言うと、彼女達は驚いたように、
「声を聞いたことは覚えているけれど、それがどんな声だったかんて覚えていない」
と口を揃えて言った。
彼はとても、優しい人だ。
彼は、温かい心の持ち主だ。
彼女はだから、彼を好きになったんだと思う。
だから私も、彼を好きになったんだと思う。
彼の歌声と、一緒に駆けられるだけで、とても幸せだった。