親友を好きな彼


聡士が大翔の話に触れたくないのは、私との事があるから…?

きっと、体を許す女を失って損したくらいにしか思っていないのだろうけど。

じゃあ、一香は?

聡士を紹介した事を後悔しているとか?

私に悪い事をしたと思っているとか?

そう考えたら、大翔と私の組み合わせは、みんなにとってストレスの元なのだろうか?

琉二に、頻繁に会えば分かるよなんて意味深な事を言われたから、気になって仕方ない。

みんなの言動を、いちいち深読みしてしまいそうだ。

それとも、単に面白くない話題なのかもしれない。

「大翔は、昔から少し謎めいたところがあったもんな」

ぼそっと、今度は聡士が言った。

「謎めいたところ?」

これには、食いつかないわけにはいかない。

「一香は社会人になってから知り合ったけど、俺たち男三人は学生からの付き合いで…」

「うん」

「それでも、彼女がいる事は知っていたけど、由衣の詳しい話は一度も聞いた事がなかったんだ」

これには、隣で黙って聞いていた琉二も強く頷いている。

「それは私も一緒で、学校が違ってたから、聡士たちの話は聞いた事がなかったのよ」

今になって思えば、あの頃から知り合っておけば、こんなややこしい関係には、なっていなかったんじゃないかと思ってしまう。

「聞いてもはぐらかすし、あいつ恋愛関係だけは秘密主義者だったな」

だから、さっき琉二が、今頃になって私の事をみんなに話すのは不思議じゃないかって言っていたのか。

確かに、二人にはそう見えるのかもしれないな…。

「でも、私の友達には会ってくれていたし、学校にも来てくれていたし、それで満足だったんだけど…」

「そうよ!由衣がそれでいいんだから、別にいいじゃない」

それまで、全く話に入ってこなかった一香が、突然そう言ってきた。

「だから、やめやめ!今は由衣と大翔も仲がいいんだし、こうやって琉二にも紹介できたし、もう昔の話はやめようよ」

一香の言葉に、聡士と琉二はそれ以上話をしなかった。

私としても特別話したい事でもなかったから、やめてもらえて良かったけれど…。

どこか引っかかるのよね。

一香はこれ以上、話を聞きたくないって感じに見えたから。

自分の知らない話だからとか、そういう単純な理由ではなく、もっと何か違う理由がある気がする。

聡士と琉二があっさりと話をやめたのも、その理由が分かっているからじゃない?

琉二の言う通り、みんなで会っていると、知らない事情が見えてきそう。

何か、複雑な事情がある気がする…。

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