ひとり恋 ~マイセルフパラダイス~ (ロングバージョン)

微笑みまじりで大きくうなづく彼女。

「昔のことだけどね、あたし、カレシに美味しいものをいっぱい作ってあげたくて、本屋さんにある料理本をそれこそ片っ端から買い込んで和・洋・中の料理を全部マスターしたことがあったし、あとカレシが海外旅行に行きたいって言ったときは、通訳ができるくらいに短期間で英会話をカンペキにマスターしたこともあったんだよ」

「へぇ、スゴイじゃん」

「うん。あたし、自分でもよくがんばったって思ったよ、そのときは……」

「そのときは?」

「でもがんばった結果、カレシはあたしのもとから離れていっちゃった……」

「どうして?」


「なんでもできちゃうオンナはかわいくないんだってさ」


そう言ったとき、彼女の顔には微笑みが浮かんでいた。

だけどソレはうれしさや喜びとは真逆の感じの微笑みだった。


「ふぅん……室井さんにも、そんな過去があったんだ……」

「ヒトに歴史アリ、ってヤツよ♪」
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